砂の器〈下〉

2010/1/18 月曜日 – 10:42:50


書名:砂の器〈下〉 (新潮文庫)
著者:松本清張

自分史を書くうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に書くときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を書くときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を書く際の参考情報になれば幸いです。

上巻を読んで、いったいこの状況(亀田を頼りに東北へ行くと空振り、しかしキーパーソンには出会う。紙吹雪をまいた女性のエッセイを読むと,そいつが犯人の衣服を捨てたと直感し、3カ月後なのにその紙吹雪を拾う。)をどうまとめるのだろう?
と、これが無名作家だったら投げ出すところを、大先生の小説だからと,下巻を読んだのだけれど。

これが実にうまい。
上巻も、あんな感じでめちゃくちゃなのに、引き込ませるのは、すべて松本清張の筆力なのだけれど、これを何の不自然も感じさせず,最後まで読み続けさせるのだ。
さらには、松本清張の代表作とも言われ、何度も映像化されている。

ところがだ。
これを「松本清張」という色眼鏡を外してみてみると、何のこともない、上巻で支離滅裂に近い妄想ストリーを,下巻で力業で大団円に持って行ったdけの話なのだ。
松本清張作品のうち、駄作の小説は、みんなこのパターン。探偵役の思い込みと直感に,強引に話を進め、偶然の一致(筆力により、偶然とは思われていない!)による犯人の特定。というパターン。
だいたいなんで、真犯人は、善人と言われている三木謙一を会ったその日に殺すのだ?
彼は真犯人にとっては、過去を暴く存在だったのかということは、一片の描写もない。

真犯人に、内心は嫌いなはずの友人は愛人の堕胎をなぜ依頼するのか? これもまったく記述されていない。
そもそも、真犯人は、戸籍を作り替えて、過去は消えていて、会ったそのときに殺意が芽生えて、殺すくらいより、他人のそら似でとぼける方が自然なのではないのか!
真犯人の生い立ちの時代的な悲惨さに、読者をたぶらかしてはいないか?

そんな数々の疑問を一切吹き飛ばすくらい、松本清張の筆力が冴え渡る、「代表作」なのだった。

自分史を書くならわたし本の文研ビズ

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